レイテンシー(遅延)


はじめに


MIDIコントローラーやシンセサイザーを購入して早速PCに繋ぎ、鍵盤やボタンを押した時に、DAWで1テンポもしくは数秒遅れてその入力が反映されるといった現象が起こる場合があります。

これは、リアルタイム収録を重視する方にとっては非常に厄介な問題です。

この若干の遅延の事を「Latency(レイテンシー)」といいます。

最近は転送速度の速いケーブルの登場やPCの性能の向上でこの現象は大分気にしなくてもよくなったが、一昔前までは非常に大きな問題でした。

ただ、近年においてもBluetooth等の無線等の使用や、端末のスペックの低さが原因で発生する場合があります。


レイテンシーの主な原因


原因は本当に様々ですが、主に挙げられる問題は以下の5つです。

順番に見ていきます。


PCのスペック


PCのスペックが低いと全般的に処理能力が落ちるので、DAWの処理速度が下がり、レイテンシーが発生します。
改善策は色々ありますが、大きく改善が望まれる物は以下の通りです。

SSDの速度はHDDに比べて驚異的です。予算があるならメインのドライブは絶対にSSDにして下さい。

制作物の長期的な保存などにはHDDの方がコスト的にも良いです。

メモリーは同じく予算があるなら可能な限り大容量を積むと効果的です。

他にCPUの性能を上げる、メモリを転送速度をより速い物に変更する、マザーボードをグレードアップする、OSをアップグレードする、DAWをアップグレードする...etc.色々ありますが、上記程大きな改善は見込めません。


ケーブルの種類


とにかく速いケーブルで繋ぐ事が大事です。USB3やThunderboltといった速い規格で繋げれれば繋いだ方が良いです。

ただし、過去FireWireであったように、独自規格は突然のサポート終了等ありますので、覚悟や先見の目が大事です。


オーディオインタフェースのスペックや工夫


高価なオーディオインタフェースは、ケーブルも上記の様に速いケーブルを採用していたり、内部のDSP処理が高速で、ノイズリダクションやエフェクトも綺麗にかかります。

ただし、DSPをかければかけるほど速度は遅くなるので、DAW側で波形処理ができるのであれば、収録後にかける方がレイテンシー問題は軽減できます。

特にEQなどはフーリエ変換等非常に重い処理が入りますので、後ですべきです。


Buffer Size(バッファサイズ)


DAWに送られた入力情報を一時的にストックしておく箱のようなもの。Youtube等の動画サイトのシークバーを参考にしてもらうとイメージしやすいです。

バッファサイズが小さすぎると、レイテンシーは小さくなる一方で、突然止まったりそれに伴うプチプチノイズのリスクの増加や、PCには高負荷となるため、DAWのフリーズといった現象のリスクが上がります。

バッファサイズが大きすぎると、上記のリスクは下がるものの、レイテンシーが大きくなってしまいます。

よって適切なBuffer Sizeの選択が重要です。

MIDIの打ち込みなどでは、バッファサイズを若干小さめ、生音収録の場合は、バッファサイズを若干大きめにすると良いかもしれません。


Sampling Rate(サンプリングレート)


詳しくはデジタル信号処理の標本化(サンプリング)や量子化といった話になってしまいます。

要は、どれだけ細かく入力信号を短冊状に細かくデジタル化するかの「細かさ」に関係する値です。

CDでは現在44.1kHz(1秒間に44100回の細かさ)を採用しています。ハイレゾだとそれより多い。

これは、「波形の最大周波数の2倍以上の周波数で標本化すれば復元できる」というシャノンの標本化定理に基づいていて、人間の可聴領域を加味して選定された値です。

人間の可聴領域が20Hz~20kHzくらいなので、その最高周波数20kHzの2倍にちょっと余裕持ったくらいがいいかなという感じです。

この44.1kHzの1/2に値する22.05kHzの事を「ナイキスト周波数」といいます。

ただ楽器によっては、48kHzを採用しているものもあるので注意。

当然細かくすればするほど波形の再現度は高くなり、データも増え、PCの負荷も増え、それがレイテンシー問題に繋がります。

よって、MIDI打ち込みやループ素材等を漁る場合は状況に応じて44.1kHzか48kHzに設定して、生録音等を意識する場合は、昨今のハイレゾ事情加味していけるなら96kHz辺りで設定する方が良いのかもしれません。

一方bitは、Sample Rateの横の細かさに対して縦の細かさに値する部分で、これも数値が高い程細かく、データも増え、PCの負荷も増え、それがレイテンシー問題に繋がります。

16bit = 2^16 = 65536 の細かさなので16bitで本当は十分なのかもだけど、ハイレゾ意識したら24bit辺りにしておく方がいいのかもですね...

なので、ハイレゾ収録を意識しない限り普通の設定で良いと思います。


無線


最近MIDIの所に装置を取り付ける事でBluetoothで無線化できるという製品を見たりしますが、 当然速度は優先の方が圧倒的速いので、配線の煩わしさから解放されるもののレイテンシー問題は顕著になります。
参考